近年のエジプトでは、消費行動に明確な変化が見られるようになってきました。
それは「モノを買う」ことよりも、時間を節約するためにお金を使うという価値観の広がりです。
都市部を中心に、食料品や日用品を短時間で届ける即配サービス、アプリで完結する各種手配サービスなどが浸透しつつあります。これらは単なる利便性ではなく、「時間を確保するための支出」として受け入れられています。
この消費スタイルの背景には、ライフスタイルの変化があります。
共働き世帯の増加、都市部での通勤時間の長さ、仕事と家庭を両立させる必要性などにより、時間はかつて以上に貴重な資源として認識されるようになりました。
その結果、
・買い物に行く時間を省く
・移動時間を短縮する
・家事や雑務を外部に委ねる
といった選択に対して、積極的にお金を使う傾向が強まっています。
特に中間所得層を中心とした都市生活者は、限られた時間をいかに効率よく使うかを重視しています。
通信インフラやスマートフォンの普及により、オンラインで完結するサービスが日常に組み込まれ、「時間を買う消費」は特別なものではなくなりました。
生活必需品への支出が続く一方で、
「時間を節約できるかどうか」
が支出判断の重要な基準になりつつあります。
この動きは、一時的なブームではありません。
時間そのものが「価値ある資源」として明確に意識され始めたことを示しています。
時間を節約することで、
・家族と過ごす時間
・自己投資や学習
・休息や余暇
に振り向けられる――。
こうした考え方が、消費行動の根底にあります。
デジタル技術と都市化の進展が、この価値観をさらに後押ししています。
エジプトで広がる「時間を買う消費」は、単なる利便性志向ではなく、生き方そのものの変化を映し出しています。
都市化、所得の安定、デジタル化という条件が重なり、消費者は「お金で何を得るか」ではなく、「お金でどんな時間を確保できるか」を考えるようになりました。
この流れは、今後エジプトだけでなく、他の新興国や都市部にも広がっていく可能性があります。
時間を価値として捉える視点は、これからの消費市場を読み解く重要な鍵となるでしょう。