ECOWASは、西アフリカ地域の経済統合と発展を目的として1975年に設立された地域共同体です。設立当初は、関税障壁を取り除き、域内貿易を促進し、経済協力を強化することが主な目標でした。
その後、政治的安定や安全保障も重要課題として加わり、紛争の調停や平和維持、人の自由な移動や投資促進など、幅広い機能を持つ統合体へと発展してきました。
組織の本部はナイジェリアの首都アブジャに置かれ、英語・フランス語・ポルトガル語が公用語となっています。加盟国は長らく15か国でしたが、近年の政治的混乱を背景に現在は12か国体制となっています。
ECOWASの理念の中心には「自立した経済圏の構築」という目標があります。単一市場や自由貿易圏の形成、共同通貨「ECO」の導入構想など、地域全体の経済的結束を高める取り組みが進められてきました。
それに加えて、紛争予防・調停、選挙監視、平和維持活動など、政治・安全保障の分野における役割も強化されてきました。域内で政治危機や内戦が発生した際には、ECOWASが仲裁に入り、制裁や軍事的支援を行うこともあります。
2020年代に入り、西アフリカ地域では軍事クーデターが相次ぎました。これを受け、マリ・ニジェール・ブルキナファソの3か国はECOWASを離脱し、新たに「サヘル同盟」を結成しました。
これらの国々は、ECOWASが重視する民主主義の原則や制裁措置に反発し、独自の安全保障連携を模索するようになっています。
加盟国の離脱は、ECOWASの統合力に大きな影響を及ぼし、地域全体の安全保障と経済協力の在り方を問い直す転機となっています。
西アフリカ最大の経済力と人口を持つナイジェリアは、ECOWASの中核的存在です。地域の治安対策や経済政策に大きく関与し、加盟国間の調整役として機能しています。
しかし、ナイジェリア自身も政治・経済の課題を抱えており、その不安定さが地域全体に波及する可能性も指摘されています。
ECOWASは経済統合だけでなく、政治・社会の安定を支える包括的な枠組みとして重要な役割を果たしてきました。しかし、加盟国の政治体制や安全保障環境の違いが顕在化するなかで、今後の団結力は試され続けるでしょう。
今後求められるのは、経済協力の深化と政治的安定の両立です。西アフリカ地域に真の平和と繁栄をもたらすため、ECOWASの存在意義は今まさに再定義されようとしています。